知られざる福沢諭吉 下級武士から成り上がった男 礫川 全次 | 書評 読んでみんさい、この本!

知られざる福沢諭吉 下級武士から成り上がった男 礫川 全次

礫川 全次
知られざる福沢諭吉 下級武士から成り上がった男

 ふとした経緯で、慶応大学のHPを見ていましたら、この本が生協書籍部の注目書籍として採り上げられていました。

 その記憶があって、近くの本屋で見かけた時、つい買ってしまいました。


 慶応大学の生協が注目図書にするくらいだから、福沢礼賛の本だろうと想像していたら、むしろその逆でした。


 特に、その下士とよばれる下級武士の出自に注目して、封建制度への反発を強く持っていた一面や、彼の生きていた頃疎んじられていた商工業などを尊重する姿勢、自分のやった過ちについて、妙なプライドを張らず、すぐ非を認めてしまうところ、啓蒙家という側面を持ちながら、時の権力に目を配りながらその影響力を行使していったしたたかさ、郷里の知り合いに狙われて、自宅に脱走用の地下道のようなものをつくったという小心なところ。。。。。


 今のことばでいう金満家と見られ、内村鑑三など、当時の知識人から揶揄されつつ、「それのどこが悪い」と開き直るようなところもあったり、極端に欧米指向で、アジア諸国に対しては同情を全く示さない「脱亜入欧」と言われる態度を一貫してとったこと。


 今まで知らなかった福沢の新たな面を、非常に多く見させてもらいました。


 そんな本なのに、全体からは、著者の福沢に対するかすかな愛情のようなものも感じられる不思議な読後感のある本でした。一杯悪口はあるけど、憎めないいいオッサンというと著者の感覚とずれているでしょうか?


 ちょっとおもしろい一冊でした。