感動をつくれますか? 久石 譲
- 久石 譲
- 感動をつくれますか?
みのむしさんからの月例投稿。いつもありがとう。
この書評を見て思ったのは、樋口裕一さんのいう「型」のこと。
オリジナリティを発揮する前に、一定の基本パターン=型を身に付けることで、応用範囲、対応可能範囲が広がるということ。
膨大な数の作品を残すには、型を抜きには考えられないということです。
久石さんも、それをお持ちだと思います。私も読んでみます。
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ご存知の通り、久石譲さんは、宮崎駿監督や北野武監督などの映画音楽を始め、大活躍中の作曲家です。この本を読んで、作曲家=芸術家→独善的変人、という先入観が見事に打ち砕かれました。
勿論、本書ではご自身の音楽活動を語っているのですが、大変理路整然としていて、どんな仕事やビジネスにも通じる理論や哲学を垣間見ることが出来ます。
例えば、映画音楽は仕事の納期が決まっていて、依頼する監督が満足するようなものにしなくてはならない、という意味で、顧客のニーズに応えるサービス業としての側面が大きく、普通想像しがちな、わがままな芸術家の「自分は天才で、自らの作品こそ最高である」という独り善がりなところは、微塵もありません。
また、作曲をする時に欠かせない「ひらめき」も、よく考えてみると、従来にない商品やサービスを開発する時には不可欠ですし、営業のプレゼンテーションをする時には、その場の雰囲気をよく読む「ライブ感覚」が必要になるのは、演奏と同じです。
さらに驚いたのは、作曲をその時の「ノリ」で行うのではないこと。日々の体調や気分とは関係なく、いつも一定のペースとクオリティで仕事をしていかないと、プロとして仕事はできない、と言い切ります。(いつも言い訳を探している私は、大いに反省しました)
音楽を趣味でやるのと、仕事としてやるのでは全く次元や視点が違う、という再発見をしました。ぜひ、一読をおすすめします。
あなたの「経験」を「通信講座」にして稼ぐ法
- 小林 敏之
- あなたの「経験」を「通信講座」にして稼ぐ法
著者の小林さんは、今でこそ一般名詞化しつつある「情報起業」というビジネスを初めて日本に紹介した方だそうです。
タイトルは「通信教育」となっているかで、本質的には「自己実現の方法として、自分の経験を世の中に広める」というふうに読めました。
以前このブログでも取り上げた杉山勝行さんの「自分ブランド」創りや片岡五郎さんの講演者としての熟年デビューと同じ発想で、長く生きてきて、自分のみが自信を持って語れるコンテンツを世に問うことで充実した、経済的にも安定したセカンドライフを手に入れようではないかという呼びかけです。
もちろん、通信教育というかたちで自分の知識、経験をどうお金に換えるかという方法論も説明されていますが、それよりも、「会社を離れた時、自分が世に問えるもの、それで飯を食っていけるものを、自分を見つめなおすことで発見しよう」とメッセージが中心で、元気付けられる内容でした。
これから定年退職を迎えられる方、ライフワークは何かを模索されている方、いろんな意味で人生の岐路に立っている方に一読をお勧めします。小林さんも失業中にこの本を著されたそうです。
たった400字で説得できる文章術 樋口裕一著
- 樋口 裕一
- たった400字で説得できる文章術
「頭のいい人、悪い人の話し方」で脚光を浴びた樋口裕一さんの文章指導本です。
ひと月ほど前、講演を聴く機会がありました。
添削塾を主宰されているだけあって、極めて実践的な文書の書き方の指導がしてあります。
まず、200字から、そして400字で、自分の言いたいことをしっかり伝える文章術を、極めて平易に教えてくれます。文章入門ー中級に上がるまでの人用ですが、書きなれた人でも自分を振り返るには役に立つ本だと思います。文章指導の指南書にもなると思います。指導に迷いのある人も参考にできます。
樋口さんの主張の骨子は、文章の「型」を覚えること。
語学でも、スポーツでも、芸術でも。。。そして実はビジネスでも、まず「型」=基本をしっかり身に付けてから応用に移る、オリジナリティの源泉はしっかりした基本であるという点です。まったく同感。
半分海外ぜいたく暮らし (財)ロングステイ財団監修
お役所が書いた「ロングステイ」お勧めの本なので、少し内容については割り引いて読む必要があるかもしれませんが、ふと考えると年金の先行きを危ぶんで暗い気持ちになるよりは、「ロングステイ」で楽しく過ごしたシニアカップルたちの話を読んで、少し良い気持ちになるのも良いのではないでしょうか?
いつの時代にも、世の中にはゆがみがあって、そのゆがみをついて問題を解決するという方法があるように思えます。
都会で取れるくらいの収入を上げながら田舎で暮らす、あるいはこの本に出てくる多くのカップルのように、長期間海外に滞在するという暮らしを考える人たちも今後は増えて来ると思われます。
最近は受け入れの方も、積極的になっているとか。
沖縄や北海道は、役所が主導して「本土」からの移住者の受け入れに力を初めているらしい。
まぁ、今ごろこんな本を読んでこんなコメントを書いている私は、既に時代に乗り遅れているのでしょうか。
でも、退職を控えた団塊世代前後の人には、読んでみてはとお勧めしたい本です。
陰日向に咲く 劇団ひとり著
- 劇団ひとり
- 陰日向に咲く
いやぁ、参った!という感じです。
いろんな才能のありそうな人だなあとは思っていましたが、こんなに余韻のある小説が書けるとは。。。
どんな小説を読んだ時とも違う感慨がありました。
日常的な生活の中で、そんなことを思うこともあるよなぁと思わせる部分もあれば、「どういう経験をしたらこんな発想が出てくるんだろう」という部分もあり。。。いつつかの短編が並べてあるのだけれども、それらがかすかにつながっていたり。
そうかと思えば、読者の思い込みを利用して(例えばある人物をこれは完全に女だと思わせておいて)最後にどんでん返し(実は男だった)、これはミステリー小説みたいだ。。。
多分コメディアンになるということは、経験と、お客(読者)を喜ばせるすべを多く持つということなんだろうなというふうに思いました。力をもっとも感じるのは、彼が次に書く本を早く読みたいと思わせてしまうところ。
夏休みの最初の読書は、充実感がありました。
「ものわかりのいい上司」をやめると、部下は育つ! 守谷雄司
月いちの常連になってくれた「みのむし」さんからの投稿です。いつも、ありがとう。前回の本、おもしろかったです。
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- 守谷 雄司
- 「ものわかりのいい上司」をやめると、部下は育つ!
人に何かを教える時に、どのような教え方をするにせよ、結果として教えられる側の能力がアップしない限り、それは単なる教える者の自己満足に終わってしまうのだ、と思います。
近頃は、コーチングや「ほめる」指導が大流行りのようですが、過去私が実際に能力を伸ばすことができたのは、大変厳しい先生や上司から妥協のない指導を受けた時で、勿論ほめられることなど、まずありませんでした。
当時「こんなことまで言われる筋合いはないだろう」と、悔しい思いをした時ほど、後で考えてみると、それが発奮材料となり、自分の殻を破るきっかけになっていたと思います。
もしかしたら、その時厳しく指導してくださった方々は、敢えて「嫌われ役」に徹し、生徒や部下の能力を引き出そうとしてくださったのではないかと、最近教える立場になって初めて気づくようになりました。
この本では、著者が「ほめる」指導に真っ向から挑み、自らの経験で「叱る」指導がいかに大切か、を語っています。管理職や講師、教師など、人に何かを教えることが仕事の一部である方に、ぜひ一読をお勧めします。
老後がこわい
- 香山 リカ
- 老後がこわい
私の勤務先でも「女性マーケット」の重要性は認識されていて、女性が抱えている不安とは何かについては、いろいろ調べても来ました。
しかし、やはり女性には女性でなければ表現できない不安があるということを改めて認識させられました。
勤務医を続けながらマスコミでも活躍している40代女性の代表みたいな香山さんですが、この本では「人には専門家として偉そうに言ってますが、ひとりの40代独身女性の自分をあえて告白します」的な部分が多く出ていて好感が持てました。
友達のような関係にいる母親との別れにどう対応するか、頼りになる家族であるペットとの死別(「ペットロス」というのだそうです)をどう克服するか。。。など
同時に、女性だけの問題でないものを多く示されています。男も読むべき女の本だと思います。
組織行動の「まずい!!」学 樋口晴彦著
昨日、丸の内丸善内に日経セミナールームで、一度お会いしたことのある樋口晴彦さんの講演会に行ってきました。
最近出された「組織行動の「まずい!!」学の紹介を兼ねたもので、主に三菱重工の建造中の大型客船「ダイアモンド・プリンセス」の火災事故について語られ、事故の直接の原因となったヒューマン・エラーを生んだ会社の組織行動上の問題点、傾向について語られました。
そして、同じような問題が、あまねく日本の企業に共通してあることを認識させてくれました。
最近の不祥事をいろいろ見ていると、共通項がいろいろありませんか。
例えば、事故や不祥事発生後の「原因究明につとめ、コンプライアンス体制を徹底することにより、再発のなきように万全を期します」という判で押したような謝罪会見。原因究明がうやむやになったまま、「嵐をまつ」いや「ほとぼりが冷めるのを待つ」姿勢。
樋口さんの実証的な姿勢には感銘を受けましたが、こうした企業に蔓延する傾向は旧帝国陸軍以来変わっていないことを改めて知らされ、「うーん。。。」という気持ちも。複雑です。
樋口さんの語り口は、組織論、リーダーシップやヒューマンエラーなど、とかく個人的な要因に矮小化されている多くの問題を組織行動の問題として捉えているところに特徴があり、文章、論旨に小気味よさがあります。
老会話 梶原しげる著
- 梶原 しげる
- 老会話―親子からビジネスまで、どう話す?どう接する?
梶原さんはフリーのアナウンサー。
この本を読んですぐに、たまたま深夜テレビを点けたらテレビショッピングに登場していました。
この本で、梶原さんは、英会話より今の日本に必要なのは「老会話」。
高齢になると、体の動き、心の動きが鈍くなる。話の転換についていけなかったり、早い話についていけないなど。また、高齢者独特の心理状態がある。
そういう特徴に合わせて話をするには、予備知識がかなり必要なんだと思わせてくれる本です。
相手を尊重するためには「佐藤さん」「鈴木さん」と普通の呼び方をする。「おじーチャン」「おばーチャン」はだめ。正面に向き合って目を合わせて話す。話の途中で急に話題を変えない。
親には「元気でいてくれてありがとう」
できているだろうか?大いに考えさせられる内容でした。
梶原さんの2部作「そんな言い方ないだろう 」「口のきき方 」も一緒に読みましたが、軽妙な語り口のような文章で、笑えるし、時々泣けます。おすすめです。